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ご挨拶

第 60 回 日本口腔組織培養学会学術大会・総会

大会長 内田 大亮

 第 60 回日本口腔組織培養学会 学術大会・総会を愛媛大学大学院医学系研究科口腔顎顔面外科学講座が主幹で開催させていただくことになりました。愛媛で開催されるのは、浜川裕之先生が 2007 年に第 44 回大会を開催して以来であり、教室員一同大変嬉しく、光栄に感じております。
 山本前会長が学会 HP に書かれていますが、本学会は口腔組織・細胞培養という研究手法を共通項にし、口腔外科学、歯科矯正学、歯周病学、生化学、解剖学、歯科理工学、薬理学等を専門とする臨床系および基礎系の多彩な分野の研究者が一堂に集う特色ある学会です。この文面を見ると、ほとんどの先生方は本学会が、「基礎研究を主体とした学会」であるという認識をお持ちになると思います。その通りなのですが、基礎研究の定義をご存知でしょうか。文部科学省の科学技術白書(令和元年)によれば、基礎研究とは「特別な応用、用途を直接に考慮することなく、仮説や理論を形成するため又は現象や観察可能な事実に関して新しい知識を得るために行われる理論的又は実験的研究」と書かれています。とかく医療業界では基礎研究を臨床研究の対義語として扱い、基礎研究の内容が臨床応用可能であるかを重要視する傾向にあります。もちろんそれは重要事項の一つではありますが、厳密にはそれは基礎研究ではなく、「応用研究」と呼ばれます。私は本学会が応用研究に特化したものである必要はないと思っています。応用云々はさておき、「不思議な現象があったので、それを深堀りしてみました」、「でもそれは自己満足、我田引水じゃない?」、それを堂々と発表し忌憚のない議論ができる研究好きのための学会が一つくらいあってもいいんじゃないでしょうか。
 特別講演は、本学分子病態医学講座の今村健志教授に「バイオフォトニクスが拓く次世代口腔組織培養研究」と題してご講演いただきます。今村先生とは定期的に夜の街に繰り出す間柄で、研究の相談だけでなく、講座運営などについてもご教示いただいております。今村先生は、鹿児島大学医学部のご卒業で医師免許をお持ちですが、皆様も御存知の通り日本を代表する基礎研究者です。今村先生は宮園研のご出身ですので、がんや骨代謝・シグナル伝達がご専門であることは言わずもがなですが、近年はバイオイメージングに注力されており、2009 年から 6 年間 JST CREST「光展開」の研究代表者として新しい顕微鏡(2光子励起顕微鏡)を開発されています。さらに 2018 年から AMED-CREST 佐藤俊朗プロジェクトにてオルガノイド顕微鏡開発に着手されており、口腔組織培養研究に応用可能な革新的技術をご紹介いただけるものと思います。
 例年本学会の懇親会は役員のみを対象としたものでしたが、今回は会員懇親会とし、道後で行うこととしました。会員懇親会は食事とホテルの温泉がセットになっていますので、道後温泉の湯もご堪能ください(懇親会前のご入浴がおすすめです)。11 月中旬の愛媛・松山は、日中平均気温は 15 度を下回ることは少なく、夜間でも 10 度を下回ることは滅多にありません。比較的過ごしやすい季節ですので、学会終了後は是非とも後泊して愛媛県の冬の味覚や観光をお楽しみいただければと思います。「他流を知ることは、自己を知ることである。」北原白秋の名言ですが、私は本学会への参加が、自身の研究の立ち位置や、新たな着眼点の発掘につながるものと確信しています。四国遍路のおもてなしの心で、多くの先生方のご参加をお待ちしております。

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